リツコ:おはようシンジ君、調子はどう? シンジ:慣れました。悪くないと思います。 リツコ:それは結構。エヴァの出現位置、非常用電源、兵装ビルの配置、回収スポット、全部頭に入ってるわね? シンジ:多分。 リツコ:では、もう一度おさらいするわ。通常エヴァは有線からの電力供給で稼動しています。非常時に体内電池に切り替えると蓄電容量の関係でフルで一分、ゲインを利用してもせいぜい5分しか稼動できないの。これが私達の科学の限界ってわけ。お分かりね? シンジ:はい。 リツコ:では昨日の続き、インダクションモード始めるわよ。 リツコ:目標をセンターに入れて。スイッチオン。 リツコ;落ち着いて、目標をセンターに。 シンジ:スイッチ・・・ リツコ:次。 マヤ:しかし、よく乗る気になってくれましたね。シンジ君。 リツコ;人の言う事におとなしく従う、それがあの子の処世術じゃないの? シンジ:目標をセンターに入れてスイッチ・・・目標をセンターに入れてスイッチ・・・目標をセンターに入れてスイッチ・・・目標をセンターに入れてスイッチ・・・目標をセンターに入れて 「第参話 鳴らない、電話」 「ではスタジオから松崎の篠原ナオコさん?」 「はい。おはようございます!篠原です。本日はなんと西伊豆の松崎へダイビングに来てるんですよ・・・」 シンジ:ねぇミサトさん、もう朝なんですけど・・・ ミサト:ウウン・・・さっきまで当直だったの・・・今日は夕方までに出頭すればいいの・・・だから寝かせて〜 シンジ:じゃあ、僕・・・ ミサト;今日木曜日だっけ?燃えるごみお願いね〜 シンジ:ハイ ミサト:学校の方はもう慣れた? シンジ:ええ。 ミサト:そう、行ってらっしゃい。 シンジ:行ってきます。 ミサト:ンンン・・・ハイ、もしもし、何だリツコか・・・ リツコ:どう、彼氏とは上手く行ってる? ミサト:彼?ああ、シンジ君ね。転校して2週間相変わらずよ。未だに誰からも電話掛かってこないのよね。 リツコ:電話? ミサト:必須アイテムだから随分前に携帯渡したんだけどね、自分で使ったり誰からもかかってきた様子ないのよ。あいつ、ひょっとして友達いないんじゃないかしら? リツコ:シンジ君てどうも友達を作るのに不向きな性格かもしれないわね。ヤマアラシのジレンマの話って知ってる? ミサト:ヤマアラシ?あのトゲトゲの? リツコ:ヤマアラシの場合、相手に自分の温もりを伝えたいと思っても身を寄せれば寄せるほど体中のとげでお互いを傷つけてしまう。人間にも同じことが言えるわ。今のシンジ君は心のどこかで痛みに怯えて臆病になってるんでしょうね。 ミサト:ま、そのうち気付くわよ。大人になるって事は近づいたり離れたりを繰り返してお互いがあんまり傷つかずにすむ距離を見つけ出す、って事に・・・ ケンスケ:ギューン、ドドドドドォーン。・・・何、委員長? ヒカリ:昨日のプリント届けてくれた? ケンスケ:エッ、アァ・・・いや、なんかトウジの家留守みたいでさ。 ヒカリ:相田君、鈴原と仲良いんでしょ?2週間も休んで心配じゃないの? ケンスケ:大怪我でもしたのかなぁ。 ヒカリ:えぇ、例のロボット事件で?TVじゃ一人もいなかったって・・・ ケンスケ:まさか。鷹ノ巣山の爆心地見たろ?入間や小松だけじゃなくて三沢や九州の部隊まで出動してんだよ?絶対十人や二十人じゃすまないよ。死人だって・・・トウジ? ヒカリ:鈴原・・・ トウジ:なんや、随分減ったみたいやな。 ケンスケ:疎開だよ、疎開。みんな転校しちゃったよ。街中であれだけ派手に戦争されちゃあね。 トウジ:よろこんどんのはお前だけやろなぁ。生のドンパチ見れるよってに。 ケンスケ:まぁね。トウジはどうしてたの、こんなに休んじゃってさ?こないだの騒ぎで巻き添えでも食ったの? トウジ:妹の奴がな。妹の奴が瓦礫の下敷きになってもうて命は助かったけどずっと入院しとんのや。家ンとこおとんもおジンも研究所勤めやろ。今職場を離れるわけにはいかんしな。俺がおらんとあいつ病院で一人になってまうからな。 トウジ:しっかし、あのロボットのパイロットはホンマにヘボやな!無茶苦茶腹立つわ!味方が暴れてどないするっちゅうんじゃ! ケンスケ:それなんだけど聞いた、転校生のうわさ? トウジ:転校生? ケンスケ:ほら、あいつ。トウジが休んでる間に転入してきた奴なんだけどあの事件の後にだよ。変だと思わない? ヒカリ:起立! 教員:あー、このように人類はその最大の試練を迎えたのであります。二十世紀最後の年、宇宙より飛来した大質量の隕石が南極に衝突。氷の大陸を一瞬にして融解させたのであります。海洋の水位は上昇し、地軸も曲がり生物の存在をも脅かす異常気象が世界中を襲いました。そして数千種の生物とともに人類の半分が永遠に失われたのであります。これが世に言うセカンドインパクトであります。経済の崩壊、民族紛争、内戦、その後生き残った人々もありったけの地獄を見ました。 「:碇君が あのロボットのパイロットというのはホント? Y/N」 教員:だが、あれから15年。わずか15年で我々はここまで復興を遂げる事が出来たのです。 「:ホントなんでしょ?」 「:Y/N」 教員:それは私たち人類の優秀性もさることながら皆さんのお父さんお母さんの血と汗と涙と努力の賜物といえるで有りましょう。 「YES」 生徒達:えーー!!! 教員:その頃私は根府川に住んでましてね、今はもう海の・・・ ヒカリ:ちょっともう、みんな!まだ授業中でしょ!席についてください! 生徒女:あー、またそうやってすぐ仕切る〜 生徒男:いいじゃんいいじゃん。 ヒカリ:良くない! 生徒女:ねぇねぇ、どうやって選ばれたの? 生徒女:テストとか有ったの? 生徒女:怖くなかった? 生徒女:操縦席ってどんなの? シンジ:いや、あの、その、そういうの秘密で・・・ 生徒女:あのロボットなんて名前なの? シンジ:よく分かんないけどみんながエヴァとか初号機って・・・ 生徒男:エッ、必殺技は? シンジ:何とかナイフって言って振動が・・・超音波みたいに・・・ 生徒女:でも凄いわ。学校の誇りよね〜 教師:で、ありますから・・・あぁ、では今日はこれまで。 ヒカリ:起立、礼!・・・ちょっとみんな最後くらいちゃんと シンジ:ウッ! トウジ:すまんなぁ転校生。ワシはお前を殴らないかん。殴っとかな気がすまへんのや。 ケンスケ:悪いね。こないだの騒ぎであいつの妹さん怪我しちゃってさ。まっ、そういう事だから。 シンジ:・・・僕だって乗りたくて乗ってるわけじゃないのに。 レイ:非常召集。先行くから。 「ただいま東海地方を中心とした関東中部の全域に特別非常事態宣言が発令されました。速やかに指定のシェルターへ避難して下さい。繰り返しお伝えいたします。・・・」 「NEON GENESIS EVANGELION EPISODE:3 A transfer」 シゲル:目標を光学で捕捉。領海内に進入しました。 冬月:総員第一種戦闘配置 「了解、滞空迎撃戦用意。」 日向:第三新東京市、戦闘形態に移行します。 マヤ:中央ブロック収容開始。 マヤ:中央ブロック及び第1から第7管区まで間で収容完了。 シゲル:政府及び関係各省への通達終了。 「現在対空迎撃システム稼働率48%。」 ミサト:非戦闘員、及び民間人は? シゲル:すでに退避完了との報告が入っています。 「小中学生は各クラス、住民の方々は各ブロック毎にお集まりください。」 ケンスケ:ええぃ、まただ! トウジ:また文字だけなんか? ケンスケ:報道管制ってやつだよ。僕ら民間人には見せてくれないんだ。こんなビックイベントだって言うのに。 ミサト:碇指令の居ぬ間に第4の使徒襲来、意外と早かったわね。 日向:前は15年のブランク、今回はたったの3週間ですからね。 ミサト:こっちの都合はお構いなしか。女性に嫌われるタイプね。 冬月:税金の無駄遣いだな。 シゲル:委員会から再びエヴァンゲリオンの出動要請が来ています。 ミサト:五月蝿い奴等ね、言われなくても出撃させるわよ。 「エントリースタートしました。」 マヤ:LCL電化 「圧着ロック解除」 シンジ:父さんもいないのに何でまた乗ってんだろ? シンジ:人に殴られてまで・・・ ケンスケ:ねぇ、ちょっと二人で話があるんだけど。 トウジ:何や? ケンスケ:ちょっと、な。 トウジ:しゃあないなぁ。 トウジ:委員長。 ヒカリ:何? トウジ:ワシ等二人、便所や。 ヒカリ:もう、ちゃんと済ませときなさいよ。 トウジ:で、なんや? ケンスケ:死ぬまでに一度だけでも見たいんだよ。 トウジ:上のドンパチか? ケンスケ:今度何時また敵が来てくれるか分かんないし。 トウジ:ケンスケ・・・お前なぁ。 ケンスケ:このときを逃してはあるいは永久に、なぁ頼むよ。ロック外すの手伝ってくれ。 トウジ:外に出たら死んでまうで? ケンスケ:ここに居たって分かんないよ。どうせ死ぬなら見てからがいい。 トウジ:アホ。何のためにネルフがおるんじゃ。 ケンスケ:そのネルフの決戦兵器ってなんなんだよ?あの転校生のロボットだよ。この前もあいつが俺達を守ったんだ。それをあんなふうに殴ったりして、それも二度も。 トウジ:・・・ ケンスケ:あいつがロボットに乗らないなんて言い出したら俺達死ぬぞ。トウジにはあいつの戦いを見守る義務があるんじゃないのか? トウジ:・・・しゃあないなぁ。お前ホンマ自分の欲望に素直なやっちゃなぁ。 ケンスケ:エヘヘ。 ミサト:シンジ君、出撃いいわね。 シンジ:ハイ。 リツコ:良くって。敵のATフィールドを中和しつつパレットの一斉射撃。練習どうり大丈夫ね? シンジ:ハイ。 ミサト:発進! ケンスケ:凄い!これぞ苦労の甲斐も有ったと言うもの!おっ、待ってました。 ケンスケ:出た! シンジ:目標をセンターに入れてスイッチ・・・ マヤ:ATフィールド展開 シンジ:目標をセンターに入れてスイッチ・・・ ミサト:作戦どおりいいわね、シンジ君。 シンジ:ハイ。 ミサト:馬鹿!爆煙で敵が見えない! シンジ:アッ! トウジ:何や、もうやられとるで? ケンスケ:大丈夫。 ミサト:予備のライフルを出すわ、受け取って。 ミサト:シンジ君、シンジ君? ケンスケ:あっちゃ〜。やっぱ殴られたのが効いてるのかな? トウジ:う、五月蝿いわい! シンジ:ハッ・・・ シゲル:アンビリカルケーブル断線。 日向:エヴァ、内臓電源に切り替わりました。 マヤ:活動限界まで後4分53秒。 シンジ:ウワッ! ケンスケ:こっちに来る! ケンスケ、トウジ:うわぁぁぁぁぁぁ!!! ミサト:シンジ君、大丈夫、シンジ君?・・・ダメージは? 日向:問題無し、行けます。 シンジ:アゥッ・・・ハッ! ミサト:シンジ君のクラスメイト? リツコ:何故こんな所に? トウジ:なんで戦わんのや? ケンスケ:僕らがここに居るから・・・自由に動けないんだ。 マヤ:初号機活動限界まで後3分28秒 ミサト:シンジ君、そこの二人を操縦席へ! ミサト:二人を回収した後一次退却。出直すわよ。 リツコ:許可の無い民間人をエントリープラグに入れられると思ってるの? ミサト:私が許可します。 リツコ:越権行為よ!葛城一尉。 マヤ:初号機活動限界まで後3分。 ミサト:エヴァは現行命令でホールド、その間にエントリープラグ排出。急いで! ミサト:そこの二人、乗って。早く! トウジ:なんや、水やないか ケンズケ:カメラ・・・カメラが・・・ゲフッ、ゲフッ・・・あっ マヤ:神経系統に異常発生。 リツコ:異物を二つもプラグに挿入したからよ。神経パルスにノイズが混じってるわ。 ミサト:今よ、後退して! ミサト:回収ルートは34番、山の東側に後退して。 トウジ:転校生、逃げろ言うとるで!転校生! シンジ:逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ 日向:プログレッシブナイフ装備 ミサト:シンジ君、命令を聞きなさい。退却よ!シンジ君! シンジ:うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! ミサト:あのバカッ! シンジ:うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! マヤ:初号機活動限界まで後30秒、28、27、26、25 マヤ:14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1 マヤ:エヴァ初号機活動停止。 日向:目標は完全に沈黙しました。 シンジ:ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ク、クッ・・・ トウジ:今日でもう三日か。 ケンスケ:俺達がコッテリと叱られてから? トウジ:あいつが学校に来んようになってからや。 ケンスケ:あいつって? トウジ:転校生や転校生。あれからどないしとんやろ? ケンスケ:心配なの? トウジ:別に心配ちゅうわけや・・・ ケンスケ:トウジは不器用な癖に強情だからね。あの後別れ際に謝っておけば三日も悶々としなくてすんだのに。ほら、転校生の電話番号。心配だったらかけてみたら? 次回予告 鬱陶しい雨の中、自分の心を克服できないシンジは遂にミサトからも逃げ出す。14歳の子供にそれは無理もなかった。目的を持たず彷徨う事しか知らないシンジを組織は連れ戻す。そこに優しい言葉はなかった。二人の少年を除いて。次回「雨、逃げ出した後」さーて、この次もサービスしちゃうわよ♪