EVA倉庫  

第弐話 見知らぬ、天井



ミサト:いいわね、シンジ君。



シンジ:あっ、はい。



ミサト:最終安全装置解除。エヴァンゲリオン初号機リフトオフ。





リツコ:シンジ君、今は歩く事だけ考えて。

シンジ:(歩く・・・)




リツコ:歩いた!



シンジ:歩く・・・






ミサト:シンジ君、しっかりして!早く、早く起き上がるのよ!





シンジ:グァァァッッ!!!



ミサト:シンジ君落ち着いて!あなたの腕じゃないのよ!

リツコ:エヴァの防御システムは?

マヤ:シグナル作動しません。

日向:フィールド無展開。



リツコ:駄目か!




マヤ:左腕損傷!

日向:回路断線!

ミサト:シンジ君よけてっ!




シンジ:ウゥッ!

マヤ:頭蓋先負に亀裂発生。

リツコ:装甲がもう持たない。





A:頭部破損、損害不明。



マヤ:制御信号が次々と断線していきます。

日向:パイロット反応ありません。



ミサト:シンジ君!!!






シンジ:ハッ



「・・・一、二、三、四、五、六、七、手足の運動、一、二、三、四、五、六、七、
八、二、二、三、四、腕を回す運動、外回り、内回り、五、六、七、八、二、二・・・」



シンジ:知らない天井だ・・・

「第弐話 見知らぬ、天井」







「こっちだ、こっちだ」





ゼーレA:使徒再来か。あまりに唐突だな。



ゼーレB:15年前と同じだよ。災いは何の前触れもなく訪れるものだ。

ゼーレC:幸いとも言える。我々の先行投資が無駄にならなかった点においてはな。

ゼーレD:そいつはまだ分からんよ。役に立たなければ無駄と同じだ。

ゼーレB:左様。いまや周知の事実となってしまった使徒の処置、情報操作、ネルフの運
用は全て適切かつ迅速に処理してもらわんと困るよ。

ゲンドウ:その件に関してはすでに対処済みです。ご安心を。







「昨日の特別非常事態宣言に対する政府発表が今朝第2新・・・」
「今回の事件には・・・」「在日国連軍の・・・」

ミサト:発表はシナリオb−22かぁ。またも事実は闇の中ね。



リツコ:広報部は喜んでたわよ。やっと仕事が出来たって。

ミサト:家も御気楽なもんね〜。

リツコ:どうかしら?ホントはみんな怖いんじゃない?

ミサト:・・・あったりまえでしょ。





ゼーレD:ま、そのとおりだな。

ゼーレA:しかし碇君、ネルフとエヴァもう少し上手く使えんのかね?



ゼーレB:零号機に引き続き君らが初陣で壊した初号機の修理代、国が一つ傾くよ。

ゼーレC:聞けばあのおもちゃは君の息子に与えたそうじゃないか。

ゼーレD:人、時間、そして金。親子揃っていくら使ったら気が済むのかね?

ゼーレC:それに君の仕事はこれだけではあるまい。人類補完計画、これこそが君の急務
だ。

ゼーレB:左様。その計画こそがこの絶望的状況下に置ける唯一の希望なのだ。我々のね。



キール:いずれにせよ使徒再来に置ける計画スケジュールの遅延は認められん。予算に付
いては一考しよう。



ゼーレD:では、後は委員会の仕事だ。

ゼーレB:碇君、ご苦労だったな。

キール:碇、後戻りは出来んぞ。

ゲンドウ:分かっている、人間には時間がないのだ。













ミサト:やっぱクーラーは人類の至宝。まさに科学の勝利ね。



リツコ:シンジ君が気づいたそうよ。

ミサト:で、容態はどうなの?

リツコ:外傷は無し。少し記憶に混乱が見られるそうだけど。

ミサト:まさか精神汚染じゃ?

リツコ:その心配は無いそうよ。

ミサト:そう・・・そうよね。いっきなりアレだったもんね。

リツコ:無理もないわ。脳神経にかなりの負担がかかったもの。

ミサト:ココロ、の間違いじゃないの?












「オーライオーライ」「そのままー」



ミサト:エヴァとこの町が完全に稼動すれば行けるかもしれない。

リツコ:使徒に勝つつもり?相変わらず楽天的ね。

ミサト:あら、希望的観測は人が生きていくための必需品よ。

リツコ:そうね。あなたのそういうところ、助かるわ。



ミサト:じゃ。







「・・・第一内科のウガイ先生、ウガイ先生。至急第一外科のアズマ先生までご連絡ください。」
「B事件の医療会議は予定通り行われます。担当者は第二会議室へ集まってください・・・」







「ポン」











リツコ:よろしいのですね、同居ではなくて?

冬月:碇たちにとってはお互いにいない生活が当たり前なのだよ。



リツコ:むしろ一緒にいる方が不自然ですか・・・





ミサト:一人でですか?

黒服男:そうだ。彼の個室はこの先の第6ブロックになる。問題は無かろう。



シンジ:はい。

ミサト:それでいいの?

シンジ:いいんです、一人のほうが。どこでも同じですから。





リツコ:何ですって?



ミサト:だから〜シンジ君は私の所で引き取る事にしたから。上の許可も取ったし。心配
しなくても子供に手出したりしないわよ〜。

リツコ:当たり前じゃないの!全く何考えてるのあなたって人は!いっつもそんな事ばっ
かり言ってるんだから・・・」

ミサト:相変わらず冗談通じない奴・・・







ミサト:さーて、今夜はパーとやらなきゃね♪

シンジ:何をですか?

ミサト:もちろん新たなる同居人の歓迎会よ。





「やっぱり引っ越されますの?」「ええ、まさか本当にここが戦場になるなんて思っても
見ませんでしたから。」「ですよねー。家も主人は私と子供だけでも疎開しろって。」



「疎開ね・・・いくら要塞都市だからって言ったって何一つ当てに出来ませんもんね。」
「昨日の事件、思い出しただけでもぞっとしますわ。」「本当に。」






ミサト:すまないけどチョッち寄り道するわよ。



シンジ:何処へですか?

ミサト:フフッ、イ・イ・ト・コ・ロ。






シンジ:なんだか寂しい町ですね。

ミサト:時間だわ。





シンジ:凄い、ビルが生えてく!

ミサト:これが使徒迎撃戦用要塞都市第3新東京市、私たちの町よ。



ミサト:そして・・・あなたが守った町。





「NEON GENESIS EVANGELION EPISODE:2 THE BEAST」






ミサト:シンジ君の荷物はもう届いてると思うわ。実は私も先日この町に引っ越してきた
ばっかりでね〜。さっ、入って。



シンジ:あっ、あの・・・おじゃまします。

ミサト:シンジ君、ここはあなたの家なのよ。



シンジ:た、ただいま・・・



ミサト:お帰りなさい♪







ミサト:ま〜ちょっち散らかってるけど気にしないでね〜

シンジ:これが・・・ちょっち?



ミサト:あ〜ゴメン、食べ物冷蔵庫に入れておいて。



シンジ:あ、はい・・・

シンジ:氷、ツマミ、ビールばっかし。一体どんな生活してるんだ?



シンジ:あの、あっちの冷蔵庫は?

ミサト:あぁ、そっちはいいの。まだ寝てると思うから。



シンジ:寝てる?





ミサト:いっただっきまーす。

シンジ:いただきます。

ミサト:ぷっっはぁぁぁ、くぅぅぅぅ。



ミサト:やっぱ人生このときのために生きてるようなものよね〜

ミサト:ん、食べないの?結構美味いわよ、インスタントだけど。

シンジ:いえ、あの、こういう食事慣れてないんで・・・

ミサト:だめよ!好き嫌いしちゃあ!



シンジ:うっ、いや、あの、違うんです。あの・・・

ミサト:楽しいでしょ。



シンジ:え?

ミサト:こうして他の人と食事取ると。

シンジ:はい・・・







ミサト:じゃあ次行くわよ〜じゃんけんポン、ポン、ポン、ポン、ポン!



ミサト:あ〜悪いわね〜シンジ君。よし、公平に決めた生活当番もこれでオールオッケーね。

シンジ:はい・・・



ミサト:さて、今日からここはあなたの家なんだからな〜んにも遠慮なんて要らないのよ。

シンジ:は・・・はい・・・

ミサト:も〜はいはいはいはいって辛気臭いわね〜。おっとこの子でしょ?シャキっと
しなさいシャキっと!



シンジ:はい・・・

ミサト:まぁいいわ。嫌な事は風呂に入ってパーと洗い流しちゃいなさい。風呂は命の
洗濯よ。








シンジ:うわぁぁぁぁぁぁ!!!ミミミミミサトさん!



ミサト:何?

シンジ:ああぁ、あぁぁ・・・あれっっっ!!

ミサト:あぁ、彼?新種の温泉ペンギンよ。

ペンペン:クワッ!

シンジ:あぁ、あれ・・・



ミサト:名前はペンペン。もう一人の同居人。それより前隠したら?

シンジ:エッ・・・うわっ!!!



ミサト:ちとわざとらしくはしゃぎ過ぎたかしら?
・・・見透かされてるのはこっちかもね。







シンジ:葛城ミサトさん・・・悪い人じゃないんだ。



ミサト:(風呂は命の洗濯よ)



シンジ:今日は嫌な事を思い出すほうが多いよな。父さんと、綾波レイか。








リツコ:レイの様子はいかがでしたか?午後行かれたのでしょ、病院に。

ゲンドウ:後二十日もすれば動ける。それまでは凍結中の零号機の再起動を取り付ける
予定だ。



リツコ:辛いでしょうね、あの子達。

ゲンドウ:エヴァを動かせる人間は他にいない。生きてる限りそうしてもらう。

リツコ:子供たちの意思に関係なく、ということですか。












ミサト:そう、あんな目にあってるのよ。また載ってくれるかどうか・・・



リツコ:彼のメンテナンスもあなたの仕事でしょ?

ミサト:怖いのよ、どう触れたらいいか分からなくって。

リツコ:もう泣き言?自分から引き取るって大見得切ったんじゃない。

ミサト:うっさい!

ミサト:あの時、私はシンジ君を自分の道具としてみていた。リツコと同じか。
あの使徒を倒したというのに・・・



ミサト:・・・嬉しくないのね。





ジンジ:知らない天井、当たり前か。この町で知ってるとこなんて何処にも無いもんな。



ミサト:(ここはあなたの家なのよ。)

シンジ:なんでココにいるんだろ。







シゲル:頭部破損。損害不明。



「活動維持に問題発生。」

ミサト:状況は?

マヤ:シンクログラフ反転。パルスが逆流しています。

リツコ:回路遮断。せき止めて!



マヤ:駄目です。信号拒絶、受信しません。

ミサト:シンジ君は?

日向:モニター反応なし。生死不明。

シゲル:初号機、完全に沈黙。



リツコ:ミサト!

ミサト:くっ、ここまでね・・・作戦中止、パイロット保護を最優先。
プラグを強制射出して!



マヤ:駄目です、完全に制御不能です!

ミサト:何ですって?











「エヴァ、再起動。」

マヤ:そんな、動けるはず有りません!

ミサト:まさか?

リツコ:暴走?




冬月:勝ったな。










リツコ:ATフィールド!!

ミサト:駄目だわ!ATフィールドがある限り・・・

リツコ:使徒には接触できない・・・

シゲル:左腕復元!



ミサト:凄い!

マヤ:初号機もATフィールドを展開、位相空間を中和していきます。



リツコ:いえ、侵食してるんだわ。

ミサト:あのATフィールドをいとも簡単に・・・










ミサト:自爆する気!!!???








ミサト:エヴァは?



リツコ:アレがエヴァの・・・

ミサト:本当の姿・・・







シゲル:回路接続。

マヤ:グラフ正常位置。



日向:パイロットの生存を確認。

リツコ:機体回収班急いで。

ミサト:パイロット保護を最優先に。




シンジ:ハッ・・・



シンジ:うわぁぁぁぁ!!!




ミサト:シンジ君、開けるわよ。



ミサト:一つ言い忘れてたけどあなたは人に誉められる立派な事をしたのよ。
胸を張っていいわ。



ミサト:お休みシンジ君・・・頑張ってね。







次回予告

エヴァの訓練、学校、道化と新たな生活を状況に流されるままただ繰り返すだけの
シンジに友達が生まれるはずも無かった。だが、エヴァのパイロットである事が
ばれ一転してクラスの人気者にされる。戸惑うシンジ。その彼を冷たく見つめる
男の子がいた。次回「鳴らない、電話。」さ〜て、この次もサービスしちゃうわよ♪